<span style="COLOR: #0F1111;">1973年のブレーメンとローザンヌでのコンサートがライブ録音されている。これ以降、２つの都市のものが</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">１つのパッケージになることはないので、その意味でもユニーク。開催地の名前がアルバムタイトルに</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">なるのではなく、『ソロ・コンサート』となっているのも、キース・ジャレットにとって、ここが出発で</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">あることを示している。</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">『ケルン』が1975年のリリースなので、その2年前の出来事。CD添付のスリーブに載っている白黒写真を</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">見ると、使っているピアノが、ちん年では当たり前となっている巨きなコンサート・グランデではなく、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">小ぶりなピアノであることに驚く。『ケルン』は当日のピアノの調子がよくなかったので、キースは</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">まともだった中音部のキーだけを使ったから、ああいうまとまりのある音楽になったという話になっているが、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">それは使われたピアノのサイズとも関係があったのかもしれない。</span> <br> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">自分は、彼のピアノソロ・アルバムの中では、『ケルン』を最上位に置く。最もよくプレーヤーにかけるのは</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">『ザンベア』だ。このアルバムは、中身の演奏よりも、彼のソロピアノ・ライブCDとしては１発目にあたる</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">ことで感慨深い（ソロ・ライブ・パフォーマンスは72年のストックホルムが最初）。</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">聴いていると、いろいろなことが思い浮かんでくる。まず1973年ということ。キースが直前まで在籍していた</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">マイルスのことを言えば、『ダーク・メイガス』が1974年で、『アガルタ』『パンゲア』が75年。マイルスは、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">もう２度と通常のアコースティック・ジャズをやらなかったから、退路を断って特攻攻撃を仕掛けたように</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">電化ファンクを突き詰めて、玉砕のようにして活動停止になる。ここに至るまでに、チック・コリアはリターン・</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">トゥ・フォーエヴァーを漕ぎ出して、ジョー・ザビヌルとウェイン・ショーターはウェザーリポートを開始する。</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">そしてキースは、ソロ・ピアノ路線に入っていく。ハービー・ハンコックも『ヘッドハンターズ』をリリースし、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">数年後にはアコースティック・プロジェクトの成功がある。彼らすべてがマイルスバンドにいた人々、なんと</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">鮮やかな飛翔なのか。ゆっくりと海底に沈むマイルスと対照的に、それぞれの道を歩む卒業生たち。</span> <br> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">キースの『ソロ・コンサート』は２コンサートがセットになっていることに意味がある。彼のその後の歩みの</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">原点として、多くの響きを聞くことができる。ブレーメンについては、このCDに収録された「パート１」</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">「パート２」の後に、アンコールとして11分以上の「トレジャーアイランド」が演奏された。延々と同じ</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">フレーズを繰り返す迫力のピアノプレイで、それは一度聞いたら忘れられないので、その様子を良質な状態で</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">収めたブートレッグ盤の方が、この日のコンサートの全体を体験できる。</span> <br> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">だから自分にとっては２枚目に収録されている「ローザンヌ」の方が価値がある。65分近くの演奏が、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">トラックに分けられずにまるまる１曲収録されている。最初は手探り状態で進むが、突然５分過ぎから</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">叙情的な、カントリー風メロディが現れる。11分頃から抒情派路線になり途中、29分あたりで拍手が</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">入って曲が途切れる。そこから鍵盤ではなく内部に張られた弦を爪弾いたり、側面叩きのアヴァンギャルドな</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">演奏があり、40分頃にはメシアンなどの現代音楽風な、フリージャズ的乱れ弾きとなる。その嵐が過ぎると、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">平穏澄明なメロディが流れ、47分からは柔らかな光が射してくる。62分過ぎ、素朴かつ神々しい連打があって、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">高音部で呟くような音階が奏でられ、曲は終わる。</span> <br> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">『ソロ・コンサート』のライブ演奏は、彼の中でも、世評的にも、まっさらな状態での、ソロ・パフォーマンス。</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">それはもうこの時にしかあり得ない状態であり、世阿弥的に言えば「時分の花（音）」。その価値、貴重さは、</span> <br> <span style="COLOR: #0F1111;">永遠に失われない。</span> <div> <font color="#0f1111" face="Hiragino Kaku Gothic ProN, Hiragino Sans, Meiryo, sans-serif"><span><br></span></font> <div> <h4 style="COLOR: #0F1111;">DISC ： 1</h4> <div> <br> </div> <div style="COLOR: #0F1111;"> <div> <table> <tbody> <tr> <td><br></td> <td>1&nbsp; &nbsp;Part I<br><br><br></td> </tr> <tr> <td><br></td> <td>2&nbsp; Part II<br><br><br></td> </tr> <tr> <td><br></td> <td>3&nbsp; Lausanne, March 20, 1973</td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> <h4 style="COLOR: #0F1111;"><br></h4> <h4 style="COLOR: #0F1111;">DISC ： 2</h4> <div> <br> </div> <div> <br> </div> <div style="COLOR: #0F1111;"> <div> <table> <tbody> <tr> <td><br></td> <td>1&nbsp; &nbsp;Lausanne, March 20, 1973</td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> </div> <div> <span style="COLOR: #0F1111;"><br></span> </div> </div>